SeagateのHDD故障、復旧記録

突然故障した我が家のHDD、Seagate製のBarracuda 7200.11 1000Gbytes品。

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この中にはデジタル写真データ(6ヶ月分)、動画データ、音楽データ数千曲、住所録、年賀状データ、イラストデータなどが入っていた。写真と音楽が実に手痛い損失になる。

 

当方の故障状況と、修理してデータとともに復活した記録としたい。

 

【ウチのHDD】

Seagate Barracuda 7200.11、ST31000340AS

ファームウェアSD15

 

【故障状況】

突然ある日、前触れもなく、パソコンの電源を入れるとHDDのアクセスランプが点灯したままになり、BIOSからの起動画面でブートできるHDDがないと表示される。もちろんWindowsは起動せず。何度も電源入れ直しても変わらず。その後、パソコン内の配線し直して電源を入れたら復活(電荷を抜くと復帰したという事例があるらしい)、しかし、その1週間後には、同じくHDDとして認識しなくなった。配線を入れ替えたり、パソコンの電源を入り切りしても二度とHDDと認識せず。

 

問題のHDD、パソコンの電源を入れるとウィィィィーンとHDDモータが回り出し、カカッカァァァーーーンと正常に動いていた頃のように動いてはいる。HDDを手のひらに持って、ゆっくりと手首を捻ると、回転時特有の手応えがあるので中身のディスクは回転してるようだ。ヘッドがカンカンと接触するような異常音はない。

 

【ネット情報を漁ってみた】

HDD復旧でググると、多くのデータ復旧業者に当たるが、1TBだと1万〜5万。そこまでお金かけて復旧するほどのデータは無いな(笑) ということで、復旧できなくてもいいやー DIYで復旧する方法はいないかなー とネット探しをしていると、シーゲート(Seagate)社の、特定品番のHDDが突然BIOSレベルで認識しなくなる「ロック現象」があるとの情報。Seagateはバグではないとの見解だとか、カスタマーセンターに送付すればまっさらなHDDにして返してくれるらしい、とか、Segateではアンロックだけの救済行為はやらない、などの情報が飛び交う。このアンロック専門で手がける個人事業主がちらほらいるので、時間がない人やDIYする自信がない人は彼らに依頼すればいい。

 

Seagate社のHDDのロックとは】

HDDに記録されているファームウェア情報が突如バグることで、自分がハードディスクであることをパソコン本体に伝えることができなくなり、BIOSレベルでHDDを認識しなくなる現象。ファームウェア情報が壊れた以外は正常である可能性が高い。HDDがクラッシュしたわけではないので、HDD内のファームウェアさえ復旧できればデータ復活できる可能性あり。

 

【ロック現象がが起こりえるHDDらは・・・】

Barracuda 7200.11

ST31000340AS, ST31000640AS, ST3750330AS, ST3750630AS, ST3640330AS, ST3640630AS, ST3500320AS, ST3500620AS, ST3500820AS, ST31500341AS, ST31000333AS, ST3640323AS, ST3640623AS, ST3320613AS, ST3320813AS, ST3160813AS

ファームウェアSD14, SD15, SD16, SD17, SD18, SD19, SD81

ただし、CC,LC品は除く

 

Barracuda ES.2 SATA

ST31000340NS, ST3750330NS, ST3500320NS, ST3250310NS

 

DiamondMax 22

STM31000340AS, STM31000640AS, STM3750330AS, STM3750630AS, STM3500320AS, STM3500620AS, STM3500820AS, STM31000334AS, STM3320614AS,STM3160813AS

 

うちのHDD、ビンゴwww

 

【そしてDIY修理へ】

先人達の報告から、「ロック現象」から復活しHDD内部のデータ復旧をできたとの成功例があるので、んじゃ、真似してやってみよう。ただ、情報がいろいろと散らばっていることと、先人達も要所要所の報告しかないうえ、説明下手(優秀なエンジニアは説明下手が多い)。なかなか苦労した(丸3日かかった)ので、ふるーるなりにまとめてみた。順を追って説明する。

 

ロックしうる製品か確認

ふるーるのこの記事は、自分のHDD、Seagate Barracuda 7200.11、ST31000340ASのロック対応をしたもの。上記の他製品でもこの通り上手くいくかは不明なので悪しからず。

 

HDDの状態の確認

対象機種なら、まずHDD単体で電源を入れてみる。HDDのモータ音は聞こえて、回転が安定したらカンカンなど異音がしないこと。カラカラ異音があるならモータ故障か、ヘッド接触が起こっている可能性があり、ファーム復帰してもデータは壊れている可能性があるので破棄したほうがいいかも。異音がなく、手のひらに持ってゆっくりとHDDの向きを変えたとき磁石に吸い付けられたり反発するような不思議な手応えを感じるならモータやヘッドは生きている。

 

ロック解除に必要な機材を揃える

壊れたHDDとは別に、Windowsが起動するパソコンが必要になる。ふるーるの場合、予備のHDDを持っていたためそちらにWindows Vistaをインストールしてデスクトップパソコンとして起動させている。壊れたHDDと通信するためにWindowsパソコンが別に一台要るのだ。HDDをロック解除するためには、ロックしているHDDに対してシリアル通信を介して、あるコマンドを打ち込む必要がある。HDDにシリアル接続するために、ふるーるの場合は「USB-TTL変換ケーブル(ふるーるは、Prolific Technology Inc.のPL2303TAチップ搭載品)」を700円程度で購入した。

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パソコンの背面にRS232C端子があるなら、RS232CTTLに変換してくれるパーツを買ってもOK。どらちも、Amazonやパーツショップ、ヤフオク等で取り扱いあり。ただ、これからRS232Cが廃れていくことを考えると、値段も変わらないしUSBのほうが後々使えるかも(ただし、USBだとドライバのインストールが必要になるため、メジャーな通信できる製品と自分のWindowsバージョンを確認して選ぶこと。Windows 8以降には対応していない通信製品があるので注意)。HDD側の通信電位が3.3V(TTL)らしく、その電位に併せてTTL対応したケーブルを使う必要がある。ちなみに、RS232Cの電位は10V、HDDと通信電位が違うので直接接続はダメ(ふるーる、直接接続してみたけど正常通信できず、Tera Termでイミフな表示になる)。あと、HDDのネジが星形(T6)の特殊ネジなので、

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これもホームセンター等で特殊ドライバーセットを購入しておくこと。

 

機材のセットアップ

購入したUSB-TTLキットをWindows立ち上げたパソコンに接続し、ドライバーをインストールして使える状態にする。正常にインストールできたところで、接続しているUSB-TTLツールがCOMの何番になっているかメモする(Tera Termなら後からでもシリアルポートの選択肢をみればなんとなくわかる)。ただし、ふるーるのチョイスしたキットの場合、Windows7までしかドライバーが対応していない。

 

接続と準備

全ての電源を落とした状態で、HDDの緑色基盤が見えるほうにし、6ヶ所全てのネジを外して基盤を分離する。

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特別な引っかけもないので、ネジを外すだけでOK。ネジを外したら、基盤の上に乗っているスポンジクッションが作業の障害になるため取り除く。ぴーっとめくって除去すればOK。

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USB-TTLキットから出ている配線3本(TX, RX, GND)を下図の通りに接続する。

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USB-TTLのTX端子が、HDDのRX端子に接続するので注意(TXは送信、RXは受信を示す)。通信安定のためGNDも接続しておくように。VCCは接続しない。HDDにはSATAの赤いコネクタは繋がず、電源供給コードのみ接続する。HDDの電源はパソコンのATA電源ケーブルから取ればよい。接続を一通り確認したら、この基盤はHDDには取り付けない。基盤単体でシリアル通信の確認をする(HDDに基盤を取り付けた状態だとシリアル通信不能となる事例があるため)。

 

アンロックに必要なソフトを起動

 フリーソフトのTera Termを使用。ソフトを立ち上げてポートや通信速度を以下のように設定する。

  ・COMポートは上記で接続したポートを選ぶこと

  ・通信速度は38400bps、Data 8bit、パリティなし、Stop 1bit

Tera Term上でCtrl と Zボタン押しで

 

F3 T>

 

表示されれば通信成立しており準備完了。全ての電源を落とす。

 

�E基盤をHDDに戻すがモータの端子だけ浮かせる

全ての電源を落とした状態で、HDD基盤を取り付けるが、写真のモータ接点のみ浮かせて非接触とさせる。

DSCF5533.jpg

近くのネジだけ緩めて、厚紙か名刺か、プラ版などを挟み込み、この端子が接触しないようにするのだ。で、この状態で電源を入れてパソコンを立ち上げる。HDDモーターに通電されずHDDモータが動かない、それを必ず確認すること。

 

HDDにコマンドを送る

Tera Termを起動し通信設定を確認する。Ctrl と Zボタン押しして、F3 T>を表示させ、下記赤字を打ちこんで、リターン入力。

 

F3 T>/2

F3 2>Z

Spin Down Complete

Elapsed Time 0.148 msecs

 

Spin Down Completeと表示されたところで、HDDにはモータ停止の命令が通った。この状態で基盤とHDDに挟んでいる厚紙を抜いてネジ締めして接触させるとHDDモータは回らない。続けて以下のコマンドを打つ。

 

F3 2>U

Spin Up Complete

Elapsed Time 9.695 secs

 

上記のUコマンドを打つとモーターが動き始める。続けて、

 

F3 2>/1

F3 1>N1

F3 1>/T

 

以上、打ち終わったらTera Termを終了し、全ての電源を落とす。30秒ほど待って電源を入れる。Tera Termを起動し通信設定を確認する。Ctrl と Zボタン押しして、F3 T>を表示させ、下記赤字を打ちこむ。

 

F3 T>m0,2,2,,,,,22

Max Wr Retries = 00, Max Rd Retries = 00, Max ECC T-Level = 14, Max Certify Rewrite Retries = 00C8

User Partition Format 5% complete, Zone 00, Pass 00, LBA 00008DED, ErrCode 00000080, Elapsed Time 0 mins 05 secs

User Partition Format Successful - Elapsed Time 0 mins 05 secs

 

上記のようにUser Partition Format Successfulの表示を確認したら、全ての電源を落として終了。うまくいったならHDDとして復活しているハズなので、Windows立ち上げてこのHDDを認識したなら、データも取り出せる状態になっている可能性が高い。

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データは全て無事でした! ふるーるの全データが残っていることを確認し、新しい同じ容量のHDDにまるっとコピーして完了。HDDのファームアップデートしてもロック現象は解消しないとの話もあり、爆弾を抱えたままのHDDを使う気にもなれないので、とりあえず危険な予備ディスクとマジック書きして、ロック経験したHDDはお蔵入りに。

 

以上、パソコンを自作するスキルがあるなら、700円と作業3時間くらい。私は原因調査と情報収集で丸3日かかりましたが(笑) やり方さえ分かれば数時間で可能。HDD捨てる前に試す価値はありますねー 怒りにまかせて分解しなくてヨカッタ。早速、写真データと音楽データはブルーレイにも焼いて保存。先人の知恵には感謝です。